高麗人参の歴史。徳川家康も虜になった高麗人参

2020.08.25高麗人参

高麗人参は日本でも薬膳料理や化粧品など、生活の身近なシーンで取り入れられている植物ですが、高麗人参の歴史はご存じでしょうか。
高麗人参は元々朝鮮半島やロシア、中国の満州地方の野山にのみ自生していた植物でした。そんな高麗人参がどのように日本や世界中に広まり、栽培されるようになったのでしょうか。
そこには徳川家を始め、世界の偉人達を虜にした高麗人参の魅力があったのです。
本記事では高麗人参の歴史についてご紹介します。

高麗人参の発祥

高麗人参の歴史を遡ると、2000年前の中国に伝わる最古の薬物書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』に記録が残されています。
そこには生命を養い老化を防ぐ、すなわち不老長寿の効能を持つ「上薬」として記録されています。
しかし、その栽培は非常に難しく、一般の市民には出回ることはほとんどありませんでした。
そのため高麗人参は、秦の始皇帝を始めとした皇族だけが手に入れることができる大変貴重なものだったのです。
高麗人参の栽培については、高麗や朝鮮時代半ばごろから始まったのではないかといわれていますが、はっきりとわかっていません。

世界に広まる高麗人参

高麗人参が世界進出の一歩を踏み出したのは、1610年のことです。
オランダ商人により西洋に紹介されたのをきっかけに、大航海時代に突入すると高麗人参は海を越えて一気に知れ渡ったのです。
その証拠に『社会契約論』で知られるフランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーの著書に高麗人参が登場したり、ルイ14世に貴重品として献上されるなど、高麗人参の知名度が高かったことを示す記録が残っています。

日本に上陸した高麗人参

高麗人参が日本に伝わったのは奈良時代といわれ、高麗人参は朝鮮の使節団により聖務天皇に送られたのが始まりだったようです。
その当時の高麗人参が現在でも奈良の正倉院に保管されているというのも驚きです。
足利時代に入ると高麗人参は朝鮮使節団によって「国交贈品」として何度も日本に贈られ、室町幕府はその見返りに銀貨を贈るなどをしながら国交を築いていきました。
当時の日本においても高麗人参は希少価値が高く、身分が高い人のみが扱うことができる高級品でした。

江戸時代、高麗人参ブームの始まり

江戸時代に入ると高麗人参の歴史に大きな変化が訪れます。
その背景には、徳川家と高麗人参のゆかりの深さが垣間見れる複数のエピソードが関係していました。
まず、江戸幕府の創設者である徳川家康は高麗人参を大変気に入り、普段から愛用してことが知られてます。
家康が健康マニアだったのは有名な話で、高麗人参の健康効果は江戸時代においても常識だったようです。

また、水戸黄門でおなじみの徳川光圀は、高麗人参の栽培に果敢に挑戦したものの、残念ながら失敗に終わったというエピソードが残っています。
時代劇に登場する8代将軍吉宗は、高麗人参の国内栽培を強く推し進め、繰り返し中国や朝鮮から種子を持ち帰り、栽培を試みました。
その結果、初めて高麗人参の種子の移植に成功したのです。
国内で栽培に成功した種子は、その後各藩に分配され、日本各地で栽培が盛んにおこなわれるようになりました。
その種子は幕府から賜れた「御種人参(オタネニンジン)」と呼ばれ、現在の生薬名の由来になっています。

そして、ここで大きな変化が訪れます。
栽培の成功と同時に、対馬藩が朝鮮から高麗人参を大量に仕入れることに成功し、一般市民も高麗人参を買えるようになったのです。
その出来事を皮切りに、江戸中に一気に「人参ブーム」が巻き起こり、密貿易や盗みまでが起こる事態に発展しました。
江戸時代、高麗人参の輸入量は毎年1000~2000斤(現在の0.6~1.2t)、最盛期には2500斤(1.5t)に上ったといわれています。
しかし、吉宗により高麗人参の国産化が進められると、その輸入量は減少の一途をたどったのです。

明治以降、高麗人参の衰退

明治維新に入ると、それまでの高麗人参の栽培にかかっていた制限がなくなり、誰もが高麗人参を栽培できるようになりました。
すると、かつては高麗人参の輸入国だった日本が、輸出国へと変貌を遂げたのです。

しかし、明治以降に入ると順調に見えた高麗人参の輸出も需要の減少と共に陰りを見せていきました。
栽培地も徐々に減り、今は福島県、島根県、長野県などを残すのみで、現在日本で使用されている高麗人参は、そのほとんどを韓国・中国からの輸入に頼っています。

まとめ

高麗人参は、かつて朝鮮との交易品として使用され、偉人達に愛され、江戸時代には人参の一大ムーブメントを起き起こすなど、日本の歴史にとって欠かせない一部分であったことがおわかりいただけたでしょうか。
その背景には、私たちになじみの深い徳川家が関わっていたというのも驚きですね。


高麗人参や水耕栽培にご興味のある方は
お気軽にお問い合わせください

お問い合わせ