水耕栽培における培養液の実際とその利点

2021.08.19水耕栽培

前回の記事では、植物に重要な肥料成分と、その役割や過剰・不足した際の害について紹介しました。これらの成分は、通常の土耕栽培であっても、水耕栽培をはじめとした養液栽培でも植物の生育には不可欠な成分です。

今回の記事では、水耕栽培を含む養液栽培における、これら肥料成分施用がどのように行われているか紹介していきます。

水耕栽培における肥料成分の施用

どのような成分を施用するか

前回の記事のおさらいにもなりますが、水耕栽培に必要な要素とは

多量要素(窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄)
微量要素(鉄、マンガン、ホウ素、銅、亜鉛、モリブデン、塩素)

であり、これらを原水に溶かしていくことにより作成が行われます。

なお、原水に井戸水を利用する場合には、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、モリブデンについては、十分な量が含まれていることが多いとされます。

その他に原水として、河川水、水道水や雨水が利用されることが多いですが、それぞれ含まれている成分が異なることがあるため、時に水質検査を行った上で、不足する要素について追加していくといった形で培養液を作成します。

したがって、もともとの原水に含まれていない(不足する)ものを、順次溶かし培養液を作成していくこととなります。

pHとの関係

培養液のpHは、肥料利用の面で重要です。pHとは、溶液の酸性度のことをさしますが、一般的な植物ではpH5.5-6.5辺りで生育が良くなるとされます。pHが問題となる一例としては、pHが上昇しすぎた場合、リンとカルシウムが結合し、沈殿化してしまい植物が利用出来ない形となってしまうことが知られています。なお、土耕栽培でもpHの変動は肥料成分同士の結合や、土壌成分と肥料成分の結合など、悪影響を及ぼすことがあるため、注意して管理する項目の1つです。

培養液のpHの調整においては、培養液に酸(リン酸・硝酸など)やアルカリ(水酸化ナトリウムなど)を加えることで調整されることが多いでしょう。

実際の培養液の作成

培養液の処方(肥料濃度)は、植物ごとに適切なものがあり、園試処方や山崎処方と呼ばれるものが作成されています。これらに従い、各肥料成分(硝酸カリ、硝酸石灰など、成分自体は通常の土耕栽培で利用されるものと同様)を適宜混合し、培養液を作成していきます。また、処方に従って作成された複合肥料(複数の肥料成分が混ざったもの)が各肥料メーカーから販売されており、これらを利用し作成することも可能です。

特定の目的を持った培養液の作成

水耕栽培では、特定の肥料成分量を調整した栽培というのも可能です。

高糖度野菜の作成

トマトでは、培養液に塩化ナトリウム(塩)を添加することで高糖度果実を生産する方法の開発が進んでいます。生育途中に徐々に塩の濃度を高めることで、果実が生育している途中に水分ストレスを与え、高糖度果実を生産する取り組みが進められています。

えぐみの少ない野菜の生産

葉菜類を中心に、窒素量の調整と高品質化が試みられています。ホウレンソウの場合、えぐみを感じる原因となるシュウ酸含量を減らした栽培方法が検討されています。シュウ酸量は肥料成分の中に含まれている硝酸態窒素との関わりがあるとされ、生育後半にかけて肥料をアンモニア態窒素を用いる方法が検討されています。

肥料成分量を調整できるのが利点

水耕栽培では、肥料成分を調整しやすいことから、高品質の野菜を生育しやすいことが1つの特徴といえるでしょう。土耕栽培では、肥料成分が土壌に吸着されることから、その調整は容易ではありませんが、水耕栽培では適宜調整することも可能です。

また、高品質野菜の生産には培養液を作る原水中の成分を確認し、必要な肥料分を適切に施用することに加え、pHなどの条件を植物が生育しやすい環境に整えてあげる事が大切といえるでしょう。

参照元サイト
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010000325
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010014275


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