水耕栽培と持続可能(サステナブル)な農作物生産

2021.05.22水耕栽培

生命を支えるための「農作物生産」は、目に見えないところで自然環境に大きな負荷をかけているのが現実です。持続可能(サステナブル)な農作物生産のためにも、今回のコラムでは「農作物生産が環境に対してどのような負荷を与えているか」について紹介するとともに、今取り組まれている「環境に負荷を与えないための工夫」について紹介していきます。

農作物生産が及ぼす環境負荷

人間が及ぼす環境負荷の例として、大気中の二酸化炭素と気温上昇の関係があります。これは、非常に有名な話です。一方で、植物は二酸化炭素を吸収するというイメージがあるため、農作物生産は環境負荷が少ないと思われがちです。しかし、実際には多くの問題が生じています。
今回は、その多くの問題がのなかから「化石燃料」と「肥料」の2点に焦点をあてて紹介していきます。

化石燃料の使用

今では、どのような野菜もほぼ一年中、手に入れることが可能です。しかし本来、野菜には「旬」がありますから栽培が困難な時期があるのが本来の姿です。
トマトを例にとれば、夜温が10~15℃以下にならないように保つことが好ましいとされ、冬季には暖房設備を利用している温室が多くみられます。このような暖房設備には、重油をはじめとした化石燃料が使用されています。
世界中から農作物を輸入することも1つの問題となっています。農作物を長距離運搬するということ自体が、化石燃料の使用に繋がります。

近年「フード・マイレージ」(食料の輸送量×輸送距離の指標)という考えが広がり、フード・マイレージの少ない「地産地消」(栽培された地域で消費する)が推奨されています。

肥料が環境に及ぼす影響

農作物の収穫量と肥料成分の関係は非常に密接です。良く知られている例としては「緑の革命」における多収量品種の導入と多量施肥による収量向上です。
一方、過剰な肥料成分が水系に流れ出すことで水質汚染の原因となっていことも現実です。肥料は農作物の正常な生育に欠かせないものの、環境にも負荷を与えることから功罪の両面があると考えられます。

近年、肥料による環境負荷を減らすため、これまでの化学肥料中心の施肥から有機質肥料(油かすや魚かす)や堆肥を中心とした施肥体系への転換、適量施肥への取り組みなどが進められています。

水耕栽培と農業の持続可能性

水耕栽培と環境への負荷との関連についてもみていきましょう。

化石燃料は多く利用される可能性がある

一般に、水耕栽培は温室をはじめとした施設栽培と併用される事例が多く、土耕栽培(土を利用した栽培)を用いた施設栽培同様、冬季を中心に加温が必要な場合が多いと考えられます。
閉鎖型植物工場における野菜栽培などの培地として水耕栽培が利用された場合には、室温の制御に加え、光エネルギーの供給にも電力を消費します(関連記事はコチラ)。

このことから、水耕栽培が用いられることが多い施設栽培では化石燃料の消費の面から考えると不利ではありますが、光エネルギーについてはLED電球の導入が進み、改善が進められています。

水質汚染を防ぐことが可能

土耕栽培と比べ、水耕栽培の最大の特徴として「培養液(培地)が隔離されている」という点があります。隔離されているものを適切に管理すれば、肥料成分が水系に流亡し、水質汚染につながることは少ないと考えられるでしょう。
水耕栽培に利用される培養液の再利用に関する技術(例:滅菌技術など)も開発が進んでおり、肥料成分による水質汚染の面では、水耕栽培はメリットの大きい栽培法といえるでしょう(関連記事はコチラ)。

水耕栽培は環境負荷の抑制も可能

農作物生産が地球環境に及ぼす影響は、想像より大きなものです。「食」は人が生きる上で基盤であり、持続可能(サステナブル)で環境への負荷が小さい農作物生産への転換は急務です。
昨今注目されている地球温暖化に関わる化石燃料使用の面では、さらなる技術開発(例:エネルギーの利用効率向上など)が待たれますが、水耕栽培は、肥料成分による水質汚染防止の観点からは、地球環境を保全し持続可能な農作物生産に一役買う技術といえるでしょう。


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