水耕栽培のデメリットとその克服

2021.03.29水耕栽培

連作障害の回避と高付加価値の安定供給や土地を立体的に利用した集約栽培に欠かせない水耕栽培の技術ですが、いくつかのデメリットがあるのも事実です。
今回のコラムでは水耕栽培の弱点を考えるとともに、この解決に向けて行われている工夫を紹介していきます。

水耕栽培におけるメリット

水耕栽培には

  • 土壌病害や連作障害の回避(メリット)
  • 高品質な農作物生産が可能(メリット・栄養)
  • 自動化や省力化と相性がよい(メリット)
  • 塩類集積の回避やこれまで農作不適地であった畑でも農業が可能になる(塩類土壌回避)
  • 農薬散布量を減らせる可能性がある(農薬)
  • 土地を立体的に利用できる(植物工場・垂直農業)

など、非常に多くのメリットがあります(詳細は、それぞれのリンク先をご覧ください)。

水耕栽培のデメリット

一方、デメリットが無いわけではなく

  • 設備導入にコストがかかる
  • 停電時の被害
  • 培養液汚染による被害

などが、問題点として指摘されています。

そこで、これらのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

設備導入や維持にコストがかかる

土耕による露地(屋外)における栽培の場合、農地さえあれば種苗代(野菜の苗など)や肥料に関わるコストなどがかかります。
一方、水耕栽培の場合は水耕栽培ユニットの設置費用がかかるとともに、一般に施設栽培と併用して利用されることも多くあり、ガラス温室やビニルハウスなどの施設建設費も必要となります。さらに、これらの維持費(電気代・燃料代)などもかさんできます。

このようなことから土耕栽培に比べ、生産に関わるコストが大きくなってしまう点が問題として挙げられています。
そのため、設備導入コストを早期に回収することが求められ、収益性の高い果菜類(トマトなど)や生育が早い葉菜類(レタスなど)で、水耕栽培の導入が盛んとなっているのが現状です。

停電時の被害も重大

水耕栽培は大きく「薄膜水耕(NFT)」と「湛液水耕(DFT)」に分けられますが、特にNFTでは停電時の被害は重大になりやすいことが指摘されています。
NFTの特徴として、フィルム状の水耕ユニットの上に培養液を薄くかけ流すことにより栽培を行っていますが、停電が発生した場合には培養液を循環させるポンプを作動させることができず、最悪の場合は植物体(野菜)の枯死に至ります。
なお、DFTでも停電が長時間にわたった場合、培養液中の酸素濃度を維持するためのエアポンプなどを作動させることができず、植物体の生育不良や枯死につながる可能性があります。

培養液汚染による被害にも注意が必要

土耕栽培とは異なり、水耕栽培では水耕ユニット中を培養液が循環していることから、植えている野菜のうち1株でも病気になった場合、病原菌などが培養液を介して水耕ユニットに植えているすべての野菜に広がってしまうという脆弱性を抱えています。

この問題に対する対処法としては

  • 病原菌などを持ち込まない
  • 培養液を紫外線ランプなどで殺菌する

などの対策が大切であると考えられています。

水耕栽培の課題を克服し、栽培面積拡大へ

停電対策や培養液汚染対策については費用対効果を考える必要があると思われますが、それぞれ非常用電源の設置や培養液の滅菌システムの完備により、対応していくことも不可能ではないと考えられます。
なお、水耕栽培の面積拡大を阻んでいる最大の原因は、設備導入・維持コストによるものであるといわれています。

しかしながら

  • 土壌病害や連作障害が回避できる
  • 培養液組成を調整することで、高品質の野菜(付加価値のある野菜)を作ることができる

このような水耕栽培の特徴を活かすことにより、安定的に高単価な野菜を作ることができることから、野菜の種類によっては設備導入コストに見合うリターンを得ることも可能でしょう。

なお、今後の水耕栽培の拡大には

  • 設備導入・維持コストの抑制
  • 培養液組成と野菜品質に関するさらなる研究

が進むことが期待されます。


高麗人参や水耕栽培にご興味のある方は
お気軽にお問い合わせください

お問い合わせ