植物工場とは?
2021.03.28水耕栽培
~水耕栽培は、植物工場になくてはならない技術~
近年、野菜などの新たな栽培施設として注目されている“植物工場”と呼ばれる施設があります。
この植物工場における植物生育には土壌ではなく、水耕栽培を含む養液栽培が多く利用されています。今回は、植物工場の種類や植物工場を利用する、メリットとデメリットについて紹介していきます。
植物工場とは
植物工場とは、野菜などの作物を「施設内において、地下部の培養液条件や光条件、温湿度条件、二酸化炭素濃度など」を精密に制御し、外環境の季節や気温などの影響を受けずに周年にわたって生産を行うことができる施設といわれています。
なお、水耕栽培の技術は「地下部の培養液条件」を精密制御できる技術として、活用されています。
また、植物工場は大きく
- 完全人工光型植物工場
- 太陽光利用型植物工場
の大きく2つに分けることができます。
完全人工光型植物工場
完全人工光型植物工場は、太陽光をいっさい利用しない栽培施設です。
太陽光を必要としないため、場所を選ばず植物の栽培を行うことが可能です。実際の栽培では植物を栽培するための栽培棚を設置し、太陽光代わりの光源として、LEDが用いられることが大半です。
完全人工光型植物工場のメリット
完全人工光型植物工場のメリットとして
- すべての環境条件を制御できることから、周年的・計画生産が可能
- 太陽光を利用しないことから、栽培棚を積み重ねて栽培を行うことが可能
というように、土地を立体的に有効活用できるとともに、周年的に野菜を安定供給可能とできる点が挙げられます。
完全人工光型植物工場のデメリット
一方、デメリットもあります。他の施設栽培に比べ
- 電気代がかかる
という点が、最大のデメリットであると考えられます。太陽光を利用しないことにより、すべての環境条件を制御することが可能ですが、野菜の生育のためには“光合成に利用する光”が必要です。
太陽光に代わる光エネルギーをLEDで代用する必要があるため、電気代がかかるという点が最大のデメリットであるいえるでしょう。
そのため、完全人工光型植物工場では光エネルギー(電気代)を無駄にしないため、葉菜類(レタスなど)の栽培が中心となっています。
太陽光利用型植物工場
もう一つの植物工場の形態として、太陽光利用型植物工場があります。
これまでの温室(ビニルハウスやガラス温室)と同様に、太陽光を利用するという点が完全人工光型と最も異なる点です。
一方、地下部の培養液条件や大気中の二酸化炭素濃度条件などについては、完全人工光型と同様に精密制御をおこないます。
太陽光利用型植物工場のメリット
太陽光利用型植物工場のメリットは
- 太陽のエネルギーを利用できる点
これにつきるでしょう。完全人工光型に比べてコスト(電気代)が抑えられることから、果菜類(トマトなど)を含めた多様な野菜の栽培に利用可能です。
太陽光利用型植物工場のデメリット
一方でデメリットとして挙げられるのは、
- 天候に左右される
- 夏場の高温対策が課題となる
という点です。
太陽のエネルギーを利用できる反面、夏場の高温対策が問題となります。
夏場の温室内は40度を超えることがしばしばあり、このような高温は野菜の生育にとっては不適です。高温を抑制するために細霧冷房(水を霧状にし、気温を下げる)などが利用されていますが、効果が十分とは言えないときもあります。
今後の農業発展に、注目の技術である植物工場
大きく2形態が存在する植物工場ですが、光や温湿度、二酸化炭素条件を精密に制御できます。このことから、野菜の収量向上や安定生産のためにも今後拡大することが期待されている技術です。
この植物工場における野菜類生育の培地には、水耕栽培を含む養液栽培の利用が不可欠であり、水耕栽培は植物工場の今後の発展になくてはならない技術といえるでしょう。
参考URL
https://www.alic.go.jp/content/000127162.pdf
https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/engei/pdf/090424-02.pdf
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/fcp/torikumi_jirei/attach/pdf/torikumi_jirei_02-16.pdf
https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/engei/pdf/090424-04.pdf