水耕栽培と農業ビジネス

2021.03.26水耕栽培

近年、異業種の企業による野菜生産分野への参入が進んでいます。そして、このような企業では土耕栽培ではなく、水耕栽培を含む養液栽培が導入されている例が多くみられます。
農業ビジネスを行うにあたり、水耕栽培を導入するメリットや課題について紹介していきます。

農作物生産と農業ビジネス

近年の就農者の高齢化や新規就農者の減少に伴い、日本では耕作放棄地(農作物栽培に利用されなくなった土地)の増加や食料自給率の減少などが問題となっています。
しかしながら、消費者の安全で高品質な野菜の需要は根強く、国内でのさらなる増産が求められています。このことから、異業種(農業分野以外)の企業が農業生産をおこなう事例が増加傾向にあります。

実際に、異業種企業の農業ビジネスの市場規模は2013年度には、445憶円程度だったものが2018年度には697億円と出荷額は急激に伸びており、特に施設栽培を用いた農業生産高が急増しています。
これらの施設栽培の多くは太陽光利用型、もしくは完全人工光型植物工場であることから、野菜の生育培地には水耕栽培を含む養液栽培が中心に用いられているものと考えられます。

水耕栽培を農業ビジネスに用いるメリット

農業ビジネスで水耕栽培を用いた場合、多くのメリットがあると考えられます。

地下部条件を制御でき、品質が安定した野菜を収穫できる

まず、水耕栽培では土ではなく培養液を用いることから、地下部の生育条件を比較的容易に精密制御することが可能です。
地上部の生育環境(気温・光量など)も併せて制御できれば、高品質な野菜を安定的に出荷することが可能と考えられます。これは安定出荷が求められる農業ビジネスでは、大きな利点と考えられます。

連作(同じ野菜を作り続けること)が可能

通常の土耕栽培では同じ野菜を作り続けた場合、連作障害(同じ野菜を続けて育てると病気が発生したり、生育が悪くなったりする)が生じやすくなります。
一方、水耕栽培では培養液を交換できることから、連作障害は生じにくいと考えられています。農業ビジネスにおいては、単一の野菜を効率的に栽培することが求められるため、連作障害を回避できるという点は大きなメリットといえるでしょう。

水耕ベッドの高さが重要

農業ビジネスをおこなうにあたっては、収穫期などの繁忙期には従業員の雇用も必要となるでしょう。しかしながら、農業における土仕事やかがんだ体勢での仕事は、いわゆる3Kに分類されるイメージにあります。
一方、水耕栽培では土壌を利用しないことに加え、水耕ベットの高さがありますから、かがむ必要もなく「従業員の労働環境改善にもつながる」というメリットもあります。

水耕栽培を農業ビジネスに用いるデメリット

しかし、水耕栽培にデメリットがないわけでもありません。

  • 栽培施設を建築する費用がかさむこと
  • 電気代や暖房代をはじめとした維持管理費用が大きくなること

このようなデメリットがあるのも事実です。

デメリットはあるものの、安定生産性は農業ビジネスに欠かせない

たしかに、栽培施設に関わるコストが大きくなることが想定される、水耕栽培農業ビジネスですが

  • 環境条件に左右されずに安定的に野菜を出荷できる

という点は、農作物栽培をビジネスとする上で見逃せないメリットであると考えられます。

しかしながら、生産コストは露地栽培(屋外での栽培)よりも大きくなることもありますから

  • 無農薬や高栄養価のような付加価値を付けた野菜の生産
  • 同じ野菜を効率的に作り続け、1年に多回数もしくは長期間の収穫を行う

ことによって施設建設や維持に関わるコストを相殺し、農業所得を増やしていく必要があると考えられます。

参考資料:露地栽培と施設栽培の経営収支、ミニトマトを例として(10aあたり)

 露地栽培施設栽培
農業粗収益1,787,000円4,071,000円
農業経営費985,000円2,043,000円
農業所得802,000円2,028,000円

平成19年産品目別経営統計より抜粋して作成


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