水耕栽培は食糧増産にもつながる技術

2021.02.13水耕栽培

現在、地球上の人口はまもなく80億人に達するといわれています。
そして、この人口はますます増加しています。この人口増加に伴い食糧需要も増加しており、農業分野ではさらなる増産が求められています。水耕栽培は、この食糧増産に対しても役に立つ技術となる可能性があります。 

これまでの食糧増産

20世紀における食糧増産は「緑の革命」に代表されるような、多収量品種(多く収穫ができる品種)や化学肥料の利用により、達成されてきました。しかしながら、従来の食糧増産を上回るベースで世界中の人口が増加しており、今後、世界各地で食糧不足になることが危惧されています。
水耕栽培は「土壌を利用しない」というその特徴から、今後の食糧増産に対する1つの手段となりえる可能性を秘めた技術です。

生育環境の精密管理と収穫量増加

まず、水耕栽培に利用される培養液を精密管理することにより、収穫量を増やす取り組みが進められています。
施設園芸先進国であるオランダでは、施設内で栽培される野菜の多くは水耕栽培を含む養液栽培によって栽培がおこなわれています。土耕栽培の場合、施用した肥料分は土壌に吸着されることから、細かな施肥管理は困難を伴います。

一方、養液栽培ではコンピューターを用い、養液栽培で利用される培養液の肥料成分を適切に、そして各植物にとって最適な条件に調整します。さらに、地上部についても気温や二酸化炭素濃度を精密管理することが可能です。

これらの工夫により、トマトでは10aあたり50tを超える収穫量を達成しています(日本では、通常10-15t程度)。

土地の垂直利用と収穫量増加

水耕栽培では空間を立体的に利用することも可能です。
近年注目されている栽培法である「人工光型植物工場」では、その培地の多くに水耕栽培の技術が用いられてます。水耕栽培の1つの特徴として土壌を利用しないことから、水耕栽培システムを垂直に、複数段、積み重ねることが可能という点があげられます。

土耕栽培の場合、栽培面積を広げて収穫量を増やすためには広い土地が必要となります。一方、水耕栽培であれば縦に立体的に空間を利用できることから、比較的狭い土地においても、その収穫量を増加させることが可能です。

これまで耕作が困難であった地域での利用も可能

水耕栽培は「土壌を利用しない」という特徴から、土壌が原因でこれまで農業利用が困難であった土地における栽培にも向いた技術といえます。

塩類集積(詳しくはこちら)や重金属汚染など、これまで土壌が原因で野菜などを栽培できなかった場所でも、水耕栽培は土壌を利用しないため、これらの問題を受けずに栽培が可能となります。このことから、これまで未利用であった土地の利活用を進めることも可能な技術といえるでしょう。 

圃場回転数を増加させることも可能

一般の土耕栽培では、収穫後に次の植物を植えるにあたり、土づくり(施肥など)が必要となります。この作業は比較的時間のかかる作業です。

一方、水耕栽培では土づくりが不要であることから、植物を植えるまでの期間を短縮できますからえ、年間の収穫回数を増加させることも可能になると考えられます。

水耕栽培は、食糧増産にもつながる技術

野菜をはじめとした農作物の収穫量は「単位面積あたりの収穫量×栽培面積」で計算されます。

今回紹介した事例のうち

  • 「生育環境の精密管理と収量増加」…野菜の生育を精密管理
  • 「土地の垂直利用と収量増加」…土地の立体的な利用
  • 「圃場回転数の増加」…1年間の収穫回数を増やす

の3事例は「単位面積あたりの収穫量」を増加させる工夫といえます。

また

  • 「これまで耕作が困難であった地域での利用」…未利用地の利用

については「栽培面積」を増やすことができる工夫といえます。

このように、水耕栽培は単位面積あたりの収穫量や栽培面積を増やすための手段の1つとして有望な技術と考えられ、今後、さらなる農作物生産に対して期待される技術といえるのではないでしょうか?


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