水耕栽培に適している野菜・植物

2020.11.20水耕栽培

今回は、水耕栽培が向いている野菜や植物について紹介していきます。水耕栽培は、初期導入コストが比較的大きいことから、積極的に導入が進められている植物もあれば、あまり進んでいないものもあります。本コラムでは、実際に水耕栽培がおこなわれている植物について、どのように生産が行われているか見ていくとともに、導入が容易である植物の特徴について紹介していきます。 

どのような野菜・植物で導入が進んでいるか?

水耕栽培は、一般に施設内(温室や植物工場)に設置され、栽培が行われることが大半です。このことから、土耕栽培(通常の畑での栽培)に比べ、初期導入コスト(施設費・水耕栽培導入にかかる費用等)が大きいことが1つの課題となっています。その一方で、肥料分等の、地下部環境制御が容易であることや、地上部についても、施設内であることから、生育速度を早めるような工夫も容易に行うことができます。

このようなことから、一般的に

  • 収穫までの期間が短い植物であること
  • 年に複数回収穫が可能であること
  • 生産物に付加価値を付けることができること

が可能な場合、水耕栽培との相性が良いと考えられます。

一方、果樹など、収穫までに長期間の栽培を要する植物では、あまり導入が進んでいないのが現状です。

積極的に導入が進んでいる植物における栽培例

実際に、導入が進んでいる野菜の例として、葉菜類(レタス類・サラダ菜・ホウレンソウやミツバなど)、果菜類(イチゴやトマトなど)や高麗人参などが挙げられます。実際に、これらの導入が進んでいる植物では、どのように栽培がおこなわれているのでしょうか?

レタス類における例

水耕栽培でレタスを栽培する場合、おおよそ50日~70日程度で、収穫ができるため、年に3~4回の収穫が可能です。また、代表的な水耕栽培の手法である、湛液水耕(DFT)および薄膜水耕(NFT)ともに、多く活用されています。また、地上部環境について、二酸化炭素濃度を調整(大気より高めにする)ことにより、生育促進をはかる工夫も行われています(1)。

ホウレンソウにおける例

ホウレンソウの場合、苗生産施設の併用により、水耕栽培による周年供給や、水耕栽培施設の稼働率向上が図られています。育苗(苗を育てる)期間は専用の苗生産施設で生育させ、その後、移植し水耕栽培で生育させることにより、年10回以上の収穫が可能となります(2,3)。このように、収穫回数を増やすことにより、収益性を高める工夫が行われています。

イチゴにおける例

イチゴの場合、水耕栽培の中でも構造が簡易で重量が軽いNFT(薄膜水耕)や、固形培地耕(水耕栽培と固形培地耕の違いはこちら)を用い、高設栽培化(地面から1m程度離れた空中で栽培)が進められています(4)。この利点としては、生産者の作業姿勢の改善につながることや、イチゴ摘み取り園では、観光客が気軽にイチゴ狩りができる環境を提供することにも一役かっていると言われています。

短期間で収穫できる植物や付加価値を付けやすい植物で導入が進む

まず、レタス・ホウレンソウをはじめとした葉菜類では、定植から収穫までの期間が比較的短く、年に複数回の収穫が可能です。そのため初期投資コストの回収が、比較的容易であり、水耕栽培の導入が進みやすい傾向にあります。

また、イチゴのように、観光客が気軽に楽しめる環境を提供するという付加価値により、収益性を向上させる工夫も行われています。

土耕栽培に比べ導入コストのかかる水耕栽培ではありますが、農地の利用効率を高める工夫が容易な植物や、消費者に喜ばれるような付加価値をつけられる植物で、導入が進みやすい傾向にあるものと考えられます。

参考文献・事例

(1)https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/067/067-115.pdf
(2)https://www.affrc.maff.go.jp/docs/report/pdf/no14.pdf(p7)
(3)http://www.napperland.net/napper/flow.html
(4)https://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/research_results/skk_seika/h10/skk98061.htm


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